2024/04/09

それぞれの方向

コロナ禍で、宗派のお役目の会議をリモートで行うことがありました。
16分割くらいにされた僧侶だけの画面を見て唖然とします。
「誰が誰かわからない・・・」

住職としての私は、お檀家さんとの会話は常にありますが、それ以外は新しい人と長く話すような場面は少なく、むしろ同じ環境や場面、質問などが多いように感じています。もちろん、それはそれで安心してもらえるのなら良いことではあります。

しかし、人さまの前で話をすることの多い私は、インプットすることも責任だと思っています。なにより、知らない人の話を聴くことが好きな私。ある方(Aさん)のスピーチを聞く機会に恵まれ、ありがたい思いと気づきを少し、おすそ分けを試みます。

◯環境が違えば目的が違う人が集まる

Aさんは青果市場に勤務の後、グルメ街道に路面店2店舗を構えました。1つは上り、沼津インターに乗る方向。1つは下り、インターを降りた後の方向。
つまり、上りはすでに沼津に寄られて、これから他のところへ行く人たち。
下りは、これから沼津に寄られる人たち、です。
それに合わせて並べる商品が全く違う、というお話し。

同じように、グルメ街道、沼津港、富士サファリパークなど、場所によって来客数、繁忙期、観光の目的もまるで違う。それに対して、準備する人も人数も違う。

ここまではいわゆるマーケティング、ですね。スピーチの良さは、その後です。


◯あなたは運が良い人間?

 私自身耳にしたことのある「あなたは今まで運が良かったですか?」の設問。松下幸之助さんの有名なエピソード。スピーチされたAさんは、この設問のゴールを「運が良いと言える人は、感謝できる人」と位置づけました。

 マーケティングや、成功失敗、震災やコロナを経て今スピーチをしているAさん。
 従業員との別れなどを踏まえて、自己紹介としてもっとも伝えたかったものは「人」「人材」の大切さ、そんな方向性を感じたのです。
 もう少し付け足すと、周りに感謝しつづけ、お互いに必要とされ、一緒に働きたい。そう思われる人に会いたいし囲まれてきた、自分もそうなりたい、とお考えのように受け取りました。

 人さまがなにを大切にしているのか、それは十人十色ですし、これが一番。はありません。

 しかし、またこれからお会いする人が「なにを望んでいるか」を考えるだけでも、全く行動、言動が変わるのではないか、そう胸に刻むのでした。

 「やっと◯◯になれました」と挨拶するか、「いろいろな方のおかげで運良く◯◯になれました」と頭をさげるか。ことばが向いている方向を意識することで、一緒に動いてくれる人、関わってくれる人。その後みんなが協力的になってくれる挨拶はどっちか、どう予想されますか?

 法華経には「還著於本人」(かえってほんにんにつく)という一文があります。
「行いや言葉は自分にかえってくるよ」です。

 もう一つ、「即遣変化人」(変化の人を遣わす)という一文もあります。
 小さなうそをつかず、いじわるをせず、頑張ってお経(に説かれていること)を広めていれば、変化(へんげ)の人を遣わして助けてくれるよ、というものです。

 ご縁ある方々と一緒に、勉強したことを共有し、世界・国・街のためにまずはよりよい地域にしていけるか。

 これは、地域に守られてきたお寺の・住職の「義務」ではないかと考えています。

 ぜひ、みなさまのいろいろなお話をお聞かせください🙏

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